「よし、今回はあの崩れかけの塔だ。噂によると奥に秘宝が眠っているらしいぞ」
ラーンが興奮気味に地図を広げる。イシェは眉間にしわを寄せながら地図を睨んだ。
「またしても根拠のない噂話かい? ラーン、もう何度も失敗しているだろう。あの塔は危険だぞ。崩落する危険もあるし、何よりもヴォルダンの監視が厳重だ」
「大丈夫だ、イシェ。今回は違うって! テルヘルさんが言うなら間違いない。それに、この塔には古代の罠が残されているらしいぞ。俺たちはそれを解除して秘宝を手に入れるんだ!」
ラーンの目は輝き、剣を手にした。イシェはため息をつきながら、自身の弓矢を確認する。テルヘルは影のように二人を見つめていた。彼女の顔は表情に乏しく、目的達成のために必要な手段だけを考えさせるような鋭い眼差しであった。
ビレーを出発し、日が暮れる頃、崩れかけた塔に到着した。石造りの塔は朽ち果てており、壁には苔が生え、一部はすでに崩れ落ちていた。
「ここだ。準備はいいか?」
テルヘルが低い声で言った。ラーンとイシェは頷き、互いに顔を見合わせた。三人は塔の入り口へとゆっくりと近づいていった。
塔の中は薄暗く、湿った空気で充満していた。石畳の上には埃が積もり、ところどころに崩れた壁から雨が漏れていた。彼らは慎重に足音を立てないように進んだ。
「ここからは俺たちが先導する。お前たちは後ろからついてこい」
テルヘルが言った。ラーンとイシェは互いに頷き、テルヘルの後を歩いた。
階段を上り、奥へと進むにつれて、塔の内部には奇妙な機械仕掛けや古代の文字が刻まれた石板が現れた。
「これは…?」
イシェが声を上げる前に、突然床が沈み込み始めた。ラーンはバランスを崩しそうになったが、テルヘルが素早く手を伸ばして彼を支えた。
「罠だ!」
テルヘルの声に、ラーンとイシェは驚いて周りを見回した。床から鋭い棘が出てきたり、壁から毒矢が飛んでくるなど、様々な罠が仕掛けられていた。
ラーンの剣が光り、罠をかわしながら敵を倒していく。イシェの矢は正確無比に飛び、敵を射抜いた。テルヘルは冷静に状況を判断し、時には自ら剣を振るい、時にはラーンとイシェの動きを指示する。三人は息の合った連携で罠を突破していった。
しかし、塔の奥深くにはさらに危険な罠が待ち受けていた。それは、単なる機械仕掛けや毒矢ではなかった。
暗闇の中に、黒い影が蠢いていた。