ラーンが巨大な斧を振り下ろした。石塵が舞い上がり、崩れた壁の奥からわずかに光る金属片が覗いた。
「よし、見つけたぞ!今回はきっと大物だ!」
ラーンの豪快な声に反し、イシェは眉間に皺を寄せた。
「また宝探しの夢でも見たのか?あの錆び付いた短剣が trésor(宝物)だとでも言うのか?」
「いや、今回は違う!感じるんだ、何か大きなものがあるって!」
ラーンの瞳は輝き、イシェの冷静な視線を振り払うように、彼は興奮気味に遺跡の奥へと足を踏み入れた。テルヘルは彼らを静かに見守りながら、薄暗い通路の端で手を動かした。小さな石を巧みに指で転がし、壁の隙間にある複雑な仕掛けを解き放つ。
「準備はいいか?」
テルヘルの言葉にラーンとイシェが振り返った時、石畳の床から冷たい風が吹き上がってきた。壁一面に刻まれた古代文字が淡い光を放ち始め、空気を震わせる不気味な音が響き渡った。
「これは…!」
イシェは言葉を失い、ラーンも慌てて剣を構えた。
テルヘルは静かに微笑んだ。
「始まったぞ。そして、終わりも近い。」
彼女の瞳の奥には、復讐の炎が燃えていた。それは、かつて奪われた故郷を思わせる、深い闇に覆われた場所を照らす、不気味な光だった。