ビレーの薄暗い酒場の一角で、ラーンが豪快に笑い声を上げていた。「また大穴が見つかったらしいぞ!あの遺跡からだな!」
イシェは眉間にしわを寄せながら、彼の言葉を聞いた。「そんな噂、どこで聞いた?」
「あいつだ、酒場のマスターの息子が。ヴォルダンからの移民ってやつらだ。よくそんな話を持ち出すな」
ラーンの言葉に、テルヘルが鋭い視線を向けた。「ヴォルダンの移民か...情報源には注意が必要だな。真偽は確かめなければならない。」
「まあ、大穴なんて見つけるのは簡単じゃないだろう」とイシェは言ったが、ラーンの目は輝いていた。
日が暮れ始めると、ビレーの街全体が影に覆われたように暗くなった。三人はいつものように遺跡へと向かった。
洞窟の入り口には、いつもとは違う不気味な静寂が広がっていた。ラーンが懐中電灯を点けると、壁一面に奇妙な模様が浮かび上がってきた。イシェは眉をひそめながら壁画を眺めた。「見たことのない記号だ...」
「何か変だな…」ラーンの声もいつもより低くなっていた。
テルヘルは慎重に足取りを進め、「警戒を怠るな。ここには何かがいるかもしれない」と警告した。
洞窟の奥深くへ進むにつれて、空気が重くなり、視界が狭まっていくように感じられた。「おかしい...何か違うぞ」ラーンの声が震えていた。
突然、壁から不気味な音が響き渡り、三人は思わず身を固めた。その音はまるで、何かがゆっくりと動き出すような、鈍い金属音だった。
イシェは剣を抜き、「何かいる!準備しろ!」と叫んだ。
漆黒の闇の中で、三人の影が揺れ動く。彼らの視界に入るものは、不気味な模様だけ。そして、その奥底から、何かがゆっくりと、確実に近づいてくるのを感じ取ることができた。