ビレーの喧騒を背に、ラーンは重い足を一歩ずつ前に出した。視界いっぱいに広がるのは、荒涼とした岩山と、その裾野に広がる遺跡の入り口だった。
「ここが噂の『失われた王墓』か…」
イシェが呟いた。彼女の瞳は、薄暗い遺跡の奥深くを見つめながら、どこか冷めた光を湛えていた。ラーンの横顔には、いつもの Carefree な笑顔が広がっていたが、その瞳にも、どこか燃えるような光が宿っていた。
「よし、イシェ！今日は必ず大穴を開けるぞ！」
ラーンはそう言い放ち、遺跡の入り口へと足を踏み入れた。石畳を歩く音だけが響き渡り、彼らの足音は、まるで時間を遡るように静かに響いていた。
テルヘルは彼らを少し遅れて続いた。黒曜石の光沢が鈍く輝く剣を手に、彼女は周囲を警戒しながら歩いていた。鋭い視線は、遺跡の奥深くをくまなく探り、何かを探しているかのようだった。
「この遺跡には、ヴォルダンの軍が以前から目を付けているらしい」
テルヘルは静かに言った。彼女の口調は冷静だったが、その言葉に潜む重厚さは、ラーンとイシェにも伝わってきた。
彼らは遺跡の奥へと進んでいくにつれて、壁一面に描かれた古代文字や、朽ち果てた石像など、様々なものを見つけた。まるで失われた文明の断片を垣間見るような感覚だった。
「ここには何かあるはずだ…」
イシェはそう呟きながら、壁に飾られた古代の地図を指さした。そこに描かれた記号は、まるで迷宮のような複雑な形をしていた。
ラーンは地図をじっと見つめ、そして、イシェの顔を見た。彼の瞳は、今まで見たことのない真剣さで輝いていた。
「イシェ、この地図…もしかしたら、王墓への道標じゃないのか？」
イシェは一瞬言葉を失った。そして、ゆっくりと頷いた。
「そうかもしれない…」
その時、遺跡の奥から、不気味な音が響き渡った。それは、まるで獣の咆哮のようだった。ラーンとイシェは互いに顔を合わせた。彼らの心には、戦慄が走っていた。
テルヘルは剣を構え、静かに言った。
「何かが近づいている…」