ラーンの大雑把な剣振りが埃を巻き上げ、イシェは眉間に皺を寄せながら咳き込んだ。「また無駄な動きだな」と呟くと、ラーンは苦笑いした。
「だって、あの石像、何かあると思ってないか?もしかしたら宝の地図が隠れてるかもって!」
イシェは視線を石像から離さなかった。「宝の地図なら、もっとしっかりとした場所に隠されているはずよ。こんなところに放置されていたら、ただの劣化石像に過ぎないわ」
ラーンの肩をトントンと叩くテルヘルが口を開いた。「まあまあ、二人とも落ち着いて。イシェさんの言う通りかもしれないけど、可能性を排除する必要はないでしょう?それに、この遺跡にはまだ多くの謎が残されている。もしかしたら、この石像が何らかの鍵になるかもしれない」
彼女の言葉にラーンは目を輝かせた。「そうか!テルヘルさん、やっぱりお前はわかってるな!」
イシェはため息をついた。「二人とも、本当に子供だなぁ…」と呟きながら、石像の細部に目を凝らした。表面には何も見受けられなかったが、ある角度から見ると、わずかに光沢のある模様が浮かび上がってくるように感じた。
「これは…!」
イシェは興奮気味に叫んだ。「ラーン、ここに注目!この模様、どこかで見たことがあるような…」
ラーンの視線も石像へと向けられた。確かに、どこかで見覚えのある模様だった。それは、ビレーの街角にある古い井戸の蓋にも刻まれている模様だった。
「あの井戸…?」
イシェは考え込むように呟いた。「あの井戸は、昔、ある伝説にまつわるものだと噂されている。もしこの石像が本当に井戸と関係があるなら…」
その時、ラーンの背後からテルヘルが声を上げた。
「見つけた!」
彼女は石像の足元に小さな隙間を見つけていた。そこには、金色の光沢を放つ小さな鏡が置かれていた。鏡に映る自分たちの姿は、どこか歪んで見えた。まるで、別の世界を見ているような錯覚に陥る。
イシェは静かに鏡に触れた。「これは…一体?」
「わからない」
テルヘルは眉間に皺を寄せた。「だが、この鏡が何か重要な意味を持つことは間違いない。この遺跡の謎を解く鍵になるかもしれない」
ラーンは興奮を抑えきれずに叫んだ。「よし!これで大穴が見つかるのも時間の問題だ!」
イシェは少しだけ不安な表情を見せたが、ラーンの言葉に引っ張られるように、鏡に映る自分たちの姿を見つめた。鏡の中の自分たちは、まるで別の世界に足を踏み入れるかのような、不思議な輝きを放っていた。