ラーンの大雑把な指示に従い、イシェは苔むした石畳の上を慎重に歩いていた。ビレーから南へ続く道は、かつて遺跡都市だった場所へと繋がると言われていたが、今は崩れかけた壁と野草が生い茂る廃墟だけが残っていた。
「本当にここなのか?」イシェが不安そうに言った。「この星図、本当に信頼できるのか?」
ラーンは肩をすくめた。「大丈夫だ。テルヘルが言うなら間違いないだろう。それに、あの星図は俺たちの人生を変えるものになるぞ!」
イシェはため息をついた。ラーンの楽観的な性格にはいつも呆れていた。彼女は星図の複雑な記号と幾何学模様を解読し、その場所を示すように思える場所にたどり着いたが、確信は持てなかった。
「ここだ!」
ラーンが石畳に埋められた円形の窪みに手を伸ばした。「このマークを見たことがあるぞ!星図と同じだ!」
イシェは彼の興奮を抑えようとした。「でも、それだけでは…」
その時、地面が激しく震えた。ビレーの近くの遺跡で起こった地震か?と一瞬思ったが、すぐに違うことに気づいた。これは何か別のものだ。
「なんだ?」ラーンが恐る恐る窪みに手を伸ばす。
すると、窪みから光が放たれ始めた。青白い光は空に向かって伸び、やがて渦を巻き始めた。
「何だ、これ!?」イシェは驚いて後ずさった。
渦の中に星図の記号が現れた。そして、その中心から声が聞こえてきた。それは遠い昔、この土地に暮らした人々の言葉だった。
テルヘルが言った。「これは古代文明の遺物だ。この星図は、それを呼び覚ますための鍵だったのかもしれない。」
ラーンの顔には興奮の色が浮かんでいた。「大穴だ!ついに大穴を見つけたぞ!」