ビレーの夕暮れ時、茜色の空に染まる街並みを背に、ラーンはイシェに酒を勧めた。「今日はいい仕事だったな。あの古代の鏡、テルヘルも大喜びだろう」
イシェは苦笑いした。「ああ、彼女の喜ぶ顔が見られるのは確かだけど、その代償として、また危険な遺跡へ連れていかれるんだろうな」
ラーンは豪快に笑った。「それはそれで楽しみじゃないか!俺たちは冒険者だぞ!」
二人は小さな酒場へと足を踏み入れた。賑やかな店内で、旅人や鉱夫たちが酒を酌み交わし、笑い声を上げていた。ラーンの背後からイシェがささやくように言った。「あの日、テルヘルが言った言葉を思い出したんだ…」
「『ヴォルダンに全てを奪われた』ってな」
ラーンの表情が曇った。「ああ…彼女は辛い過去を持っているんだろうな。俺たちにできることは遺跡を探して、彼女を助けることだけだ」
イシェは静かに頷き、酒を一口飲んだ。「でも、僕たちは一体何のためにこんな危険なことをしているんだろう…」
ラーンの目は遠くを見つめた。「大穴を見つけるためさ!いつか必ず、俺たちの大穴が見つかる日が来る!」
イシェは苦笑した。ラーンの言葉にはいつも力強さがあるが、その根底にあるのは子供のような夢に聞こえた。しかし、イシェ自身も、この街を抜け出すために、何かしらの希望が必要だった。
二人は酒を飲み続け、明け暮れまで語り合った。翌日、彼らは再びテルヘルと共に遺跡へと向かうことになる。危険な場所だが、そこにはきっと、彼らの未来を切り開く鍵があるかもしれない。