冷たい風がビレーの街を駆け抜けていった。ラーンの鼻をチクチクと刺すような寒さだ。イシェは肩を寄せ合いながら、薄暗い路地裏を歩いた。
「今日は特に寒いな。遺跡の入り口が凍え付いちゃってるんじゃないか」
イシェの声は少し震えていた。ラーンはいつものように Carefree に笑って言った。
「大丈夫だ。俺たちの体で温めるんだろ？それに、今日はテルヘルさんが高い報酬を払ってくれるから、頑張ろうぜ！」
そう言いながら、ラーンの視線は近くの酒場に注がれていた。明け方、いつもより早く起きて遺跡に向かうため、イシェに無理を言って酒場には行けなかったのだ。イシェはラーンの後ろ姿を眺めながら、小さくため息をついた。
テルヘルとの契約で得た報酬は確かに魅力的だった。しかし、イシェはどこか不安を感じていた。テルヘルはヴォルダンへの復讐を誓う謎の女性だ。彼女の目的がはっきりとは分からず、ラーンに巻き込まれるのが怖いと思ったのだ。
「よし、着いたぞ！今日はこの遺跡だな！」
ラーンの声が響き渡った。イシェは深呼吸をして、後ろ髪を引かれる思いでラーンについていくことにした。遺跡の入り口は凍りついており、冷たい空気が彼らを包み込んだ。イシェはラーンが持ち出した焚き火に手を当てながら、テルヘルとの契約を振り返った。
「あの女性が本当に信頼できるのか…」
イシェはそう呟きながら、明け方の薄暗い空を見上げた。