ビレーの酒場で、ラーンが豪快に笑う。「おいイシェ、また大穴が見つかったって噂だぞ！今度こそ金持ちになれるかもな！」
イシェは眉間に皺を寄せながら、ラーンの言葉を無視して酒を一口飲んだ。「そんな噂話に惑わされるな。遺跡探検は危険だぞ、ラーン。特に最近じゃヴォルダンの影が…」
「大丈夫、大丈夫！俺たちにはテルヘルさんいるだろ？あの女ならどんな敵も倒せる！」ラーンの言葉にイシェはため息をついた。テルヘルは確かに強い。冷酷で計算高いが、その力と知識があれば確かに安全度は増す。しかし、イシェはテルヘルの目的を疑っていた。ヴォルダンへの復讐だと語る彼女は、遺跡探検にはあまり興味がないように見えた。何か別のもの、何か大きなものを求めているようだった。
「よし、今日はテルヘルさんと遺跡に潜るぞ！」ラーンの興奮に押されるように、イシェも立ち上がった。日が暮れる頃、彼らはビレーから離れた山岳地帯の遺跡へと向かった。遺跡の中は薄暗く、湿った空気で満たされていた。壁には古代文字が刻まれており、ラーンとイシェはテルヘルの指示に従い慎重に進んでいった。
「ここだ。」テルヘルが壁の一角を指差した。そこに奇妙な模様が刻まれており、その中心からは微かな光が漏れていた。「これは…」テルヘルは目を輝かせながら呟いた。「昇華の秘術に関するものだ。この遺跡には、それを解き明かす鍵があると確信している。」
イシェは不安を感じた。昇華とは、伝説に語られる超常的な力のことだった。強力な力を得られると言われているが、同時に危険も大きい。テルヘルの目的は単なる復讐ではないのかもしれない。何か大きな野望があるのではないか…
ラーンは興奮気味に壁を触れた。「すごいぞ！これは大穴だな！」しかしイシェはラーンの言葉に耳を傾けなかった。テルヘルの瞳に映る光が、彼の心を強く揺さぶっていた。それは復讐の炎ではなく、何かもっと巨大で恐ろしい野望の光だった。