ビレーの朝焼けが、廃墟と化した遺跡の残骸に紅く染まった。ラーンが不機嫌そうに剣を磨いている横で、イシェは地図を広げながら呟いた。「今日はあの崩落した塔の奥深くを探検するんだって?テルヘル、本当にここを掘り下げる価値があると思ってるのかい?」
「価値があるかどうかは、実際に目にしてみないとわからないでしょう」テルヘルの声は冷酷に響いた。「遺跡には様々な秘密が眠っている。財宝だけでなく、歴史を塗り替えるようなものさえもね。それに…」彼女は鋭い視線でラーンとイシェを見据えた。「私たちには時間がない。ヴォルダンが動き出す前に、何かしらの成果を上げなければいけない」
ラーンの眉間がより深く皺になった。「またヴォルダンか。いつになったらお前は過去のことと決着をつけるんだ?」
「過去と決着をつけるためには、現在の力をつけなければならないのよ」テルヘルはそう言って立ち上がった。「さあ、準備はいいかい?あの塔には、私たちを昇天へと導くものがあるかもしれない」
ラーンはため息をつきながら剣を背負った。イシェも地図を片付け、小さく頷いた。三人は廃墟へ向かい、朝陽に照らされた遺跡の影に姿を消していった。
塔の内部は湿気で充満し、埃が舞っていた。崩れ落ちた石畳の上を慎重に進む三人の後ろから、かすかな音が聞こえてきた。イシェが耳を澄ませると、それは金属音だった。
「何かいるぞ…」イシェは緊張した声で言った。ラーンも剣を握りしめ、テルヘルは視線を鋭く細めた。
影の中から、何者かが姿を現した。ボロボロのローブをまとった老人は、杖をついてゆっくりと近づいてきた。彼の目は死んだように白濁しており、口からはかすれた声が漏れていた。「汝らは何を探しに来たのか…この遺跡には、昇天の扉への鍵が眠る…」
老人の言葉に、三人は互いに顔を見合わせた。昇天…? 鍵…? 何か大きな秘密が隠されていると感じた瞬間、老人は杖を地面に突き刺し、奇妙な呪文を唱え始めた。