灼熱の太陽が容赦なく大地を焼き尽くす。ビレー周辺は長らく雨が降らず、井戸も枯れ始めていた。それでもラーンはいつものように陽気に笑っていた。
「イシェ、今日はきっと大穴が見つかる気がするんだ！ほら、あの遺跡の奥深くまで入ってみないか？」
彼は興奮気味に剣を構え、イシェに促す。イシェはため息をつきながらも、ラーンの無邪気な笑顔に負け、小さく頷いた。
「わかったわかった。でも、今回は本当に慎重に行こうね。水はわずかしか残ってないし…」
テルヘルは二人を見下ろすように静かに言った。「焦る必要はない。目標を達成するには時間が必要だ。」彼女の視線は遠く、ヴォルダンへと向かっていた。
遺跡の入り口には、ひび割れた石碑が立っていた。かつて栄華を極めた文明の痕跡だが、今は砂塵に覆われ、忘れ去られた存在となっている。
ラーンは力強く石碑を押し開け、内部へと入っていった。イシェは後ろから続くが、足取りは重かった。いつも通りの遺跡探索にも関わらず、今回はどこか不穏な空気が漂っていた。
地下深くへと進むにつれて、気温と湿度が上がっていった。壁には奇妙な模様が刻まれ、天井からは滴り落ちる水が地面に黒いシミを作っていた。イシェは不吉な予感を拭いきれなかった。
「ラーン、ここは何か変だぞ…」
ラーンの足音だけが響く静寂の中、イシェの言葉が小さく聞こえた。ラーンは振り返らずに言った。
「大丈夫だ、気にすんな！」
その時、床から突然黒い煙が噴き出した。ラーンとイシェは驚いて後ずさるが、煙は急速に広がり、彼らの視界を遮った。
「くそっ！何だこれは！」
ラーンの叫び声もすぐに煙に飲み込まれてしまった。イシェは必死に手を伸ばしたが、ラーンの姿は見えない。
「ラーン！」
イシェの声だけが、乾燥した空気中に響き渡る。
テルヘルは冷静さを保ち、周囲を警戒していた。彼女は煙の中に何かを感じ取っていた。それは単なる自然現象ではない、何か悪意のある力を感じたのだ。
この遺跡は、旱魃に苦しむ人々にとって最後の希望であったはずだ。しかし、その奥には、彼らを飲み込む暗黒の力があった。