「準備はいいか?」ラーンがイシェの顔色を見ながら言った。薄暗いビレーの朝焼けは、まだ完全に影を払うには至っていない。イシェは小さく頷きながら、背負う荷物の紐を締め直した。今日の遺跡は、日輪の光が差し込む場所に位置するらしい。テルヘルがそう言っていた。
「あの遺跡は特殊だ」とテルヘルは yesterday 夜に言った。「日輪が特定の角度で当たることで、内部の仕掛けが作動するらしい。危険な場所だが、その分価値ある遺物も眠っているという。お前達には、日輪の動きを把握し、タイミングを合わせることが重要だ」
ラーンの視線は、イシェの細身の体に落ちた。いつも通り彼女は冷静で、少し不安げに見える。しかし、彼女の目は決意に満ちている。ラーン自身も、どこか落ち着かない気持ちを抱えていた。日輪が照らす遺跡、そしてテルヘルの目的。何か大きなものを感じさせる予感がしたのだ。
「よし、行こう」ラーンの声は、いつものように力強かった。イシェは小さく頷き、彼に続くようにビレーの外へと歩み出した。三人は、まだ暗闇に包まれた街を背に、日輪に向かって進んだ。