ラーンの大笑い声がビレーの夕暮れに響き渡った。「ほら、イシェ！また一つ大穴だ！」 イシェが眉間にしわを寄せながら壺を覗き込む。「ただの古い壺じゃないか。ラーン、いつもこうやって期待させて…」 壺の中は確かに埃まみれの古びた陶器だった。「でも、もしかしたらなにか隠れてるかもよ？」ラーンの言葉にイシェはため息をついた。
日没が近づくにつれて空の色が濃くなり始める中、彼らは遺跡の入り口に戻った。テルヘルは、いつものように冷静に地図を広げている。「今日はここまでだ。明日の朝、この地点から探索を再開する。」 ラーンの足取りが重かった。今日の収穫は乏しく、イシェの心配そうな視線が痛いほどに感じられた。
「おい、テルヘル。あの遺跡の奥深くにあるって噂の部屋について、何か知ってるか？」ラーンはテルヘルの顔色を見ながら尋ねた。テルヘルは一瞬だけ目を細めたが、すぐにいつもの冷静な表情に戻った。「情報源は信頼できない。噂に過ぎない可能性が高い。」 しかし、ラーンの目は輝いていた。イシェは彼を止めようとしたが、言葉は出なかった。日没と共に街の灯りが一つ一つ点灯していく中で、彼らは遺跡へと足を踏み入れた。
暗い通路を進んでいくと、薄暗い光が漏れてくる場所があった。「ここか！」ラーンは興奮した様子で部屋に駆け込んだ。部屋の中央には、巨大な石棺が置かれていた。イシェは緊張した面持ちで周囲を見回し、「何か罠があるかも…」と言いかける前に、ラーンの叫び声が響き渡った。「見つけた！大穴だ！」 石棺の蓋が開けられ、金銀財宝が溢れ出ているように見えた。しかし、その瞬間、部屋全体を覆うように黒い影が動き始めた。