ラーンの重い足音が石畳の上を響かせ、イシェの軽い足取りと重なる音は、ビレーの朝市を通り過ぎる風に乗って街角まで届いた。今日も一日が始まったのだ。
「今日はどこ行くんだい？またあの危険な遺跡か？」
イシェが、ラーンの背後から顔を覗き込む。彼の顔には、日差しを遮るような深い影が落ちている。
「おいおい、そんな顔すんなよ！今日はきっと大穴が見つかるって気がするんだ！」
ラーンはそう言いながら、陽光に照らされた剣を片手に、街の喧騒から離れた遺跡へと向かう。イシェはため息をつき、後ろをついていく。
「大穴なんて…」
イシェが呟いた言葉は、日差しに溶け込んで消えていった。
テルヘルは、彼らの後ろを少し遅れて歩いていた。彼女の目は鋭く、影に隠れた街の端々を警戒しているように見えた。彼女は、ラーンとイシェの背中を見ながら、小さく舌打ちをした。
「大穴…」
彼女もまた、その言葉が心の中で響いていた。だが、テルヘルにとっての大穴は、金銀財宝ではなかった。それは、ヴォルダンに奪われた全てを奪い返すための力だった。
遺跡の入り口に近づくと、日差しが岩肌に反射し、 blindingly brightな光になった。ラーンは目を細めて、その光を遮りながら、遺跡の中へと進んでいった。イシェとテルヘルもまた、彼の後を続いた。