ラーンが石の破片を投げ捨てて、「また空振りかよ！」と叫んだ。イシェが彼を睨みつける。「せめて少しは慎重にすればいいのに。あのトラップ、何度目だ？」ラーンは苦笑した。「だって、宝の匂いがするんだよ！ほら、この洞窟の奥には何かがあるって感じるだろ？」イシェはため息をつきながら、「感じるのはいつも君の空腹と欲望だけよ」と言い返した。
その時、テルヘルが「静かにしなさい！」と鋭い声で遮った。彼女は洞窟の奥深くをじっと見つめていた。「何かいる…気配を感じる。」ラーンの顔色が変わった。「まさか、あの噂の…」イシェは不安げに尋ねた。「ヴォルダンの兵士？」テルヘルは頷いた。「そう。この遺跡を狙っているのは我々だけじゃない。」
三人は緊張した面持ちで剣を構えた。洞窟の奥から影がゆっくりと伸びてきた。ラーンは「よし、行くぞ！」と叫び、剣を抜こうとした瞬間、イシェが彼の腕をつかんだ。「待った！何か変だ…」彼女は静かに言った。「あの気配…まるで…」
その時、洞窟の入口に陽光が差し込み、影が揺らめいた。影の先から、奇妙な生き物がゆっくりと現れた。それは人型の獣で、鋭い牙と爪を持ち、体全体が鱗で覆われていた。しかし、その目はどこか哀しそうに見えた。
獣はゆっくりと近づき、イシェの前にしゃがみ込んだ。そして、小さな声で言った。「…助けて…」ラーンは驚いて「な、何だ…？あの獣が話す！？」イシェは獣の目を見つめ、「なぜ我々を助けを求めるのか…教えて下さい。」と尋ねた。獣はゆっくりと頭を下げ、イシェの手を nudgedした。そして、かすれた声で言った。「…日向ぼっこ…」
三人は互いに顔を見合わせた。一体何が起こっているのか、誰も理解できなかった。