ラーンが「今日は何の日だっけ?」と尋ねると、イシェは小さくため息をついた。「そんなこと気にしなくてもいいよ。遺跡へ行く日ならそれで十分じゃないか」。
ラーンの肩越しに、テルヘルが冷たく言った。「日めくりを気にしているのは、君たちには理解できないだろう」。彼女は薄暗い tavern の窓の外を眺め、「ヴォルダンでは、今日は何の日なのか、全ての人々が知る。そして、その日が彼らの人生を左右するのだ」。
ラーンは首を傾げた。「そんなこと言っても、僕たちはヴォルダンに住んでないんだろ? 何にも関係ないんじゃないか?」。イシェはラーンの肩を軽く叩き、「落ち着いて。テルヘルには理由があるんだ」と囁いた。
テルヘルは立ち上がり、テーブルに置かれた地図を広げた。「この遺跡はヴォルダンとの国境付近にある。そこに眠る遺物は、ヴォルダンの歴史と深く関わっている可能性が高い。もしかしたら、あの日、ヴォルダンが僕らを奪った理由が分かるかもしれない」。
ラーンの顔色が変わった。「あの日」の記憶が蘇ってきたのだ。彼の村を襲い、全てを奪っていったヴォルダン兵たちの姿。イシェはラーンの手を握りしめ、「大丈夫だよ。私たちと一緒にいる限り、何も怖くない」。
テルヘルは地図に指を落とした。「今日の遺跡探査は、単なる日めくりではない。過去と向き合い、未来を切り開くための重要な一歩になるだろう」。彼女の瞳には、復讐の炎が燃えていた。