「よし、今日はあの西の遺跡だな!」ラーンの豪快な声と、イシェの小さくため息がビレーの朝の静けさに溶け込んだ。見慣れた景色の中を歩く三人の後ろ姿は、どこか重みを感じさせた。テルヘルが彼らの前に立ちはだかる影のように、いつもより少しだけ長く、深く沈んでいた。
「あの遺跡には、ヴォルダンの兵士がかつて… 」イシェの言葉が途切れると、ラーンが大きく頷いた。「ああ、聞いたことがある!あの伝説の剣が眠ってるって話だ!」彼の目は輝き、いつものように興奮気味に話し始めた。「あれを手に入れたら…」
テルヘルは彼らを静かに見つめた。二人が遺跡探しの夢を語り合う姿を見て、自分の目的を思い出すと胸が締め付けられた。復讐のために必要なもの、それはただ剣だけではない。この二人は、その鍵の一部なのかもしれない。彼女は小さく頷き、「準備はいいか?」と尋ねた。
ラーンの笑顔とイシェの少し硬い表情を見つめながら、テルヘルは一歩踏み出した。三人の足跡は、まだ見ぬ未来へと続く道に刻まれていく。