ビレーの夜空には、薄っすらと星が散りばめられていた。新月が空を覆い隠すように沈みゆく時間帯だった。ラーンはイシェに話しかけながら、 tavern の暖炉の前で火を眺めていた。
「イシェ、あの遺跡の地図、まだ探してるのか?」
イシェは静かに頷き、テーブルの上にあった古い地図を広げた。そこに描かれているのは、ビレーから北へ続く山脈の険しい道と、その奥に位置する謎の遺跡の場所だ。
「テルヘルが言った通り、あの遺跡には何かあるはずなんだ。俺たち、あそこで大穴を掘り当てられるかもしれないって」
ラーンは興奮気味に言ったが、イシェは眉間に皺を寄せた。
「でも、地図の断片だけじゃ、遺跡の位置も正確じゃない。それに、ヴォルダンとの国境に近い場所だし、危険すぎるんじゃないのか?」
イシェの言葉にラーンの笑顔が少し薄れた。確かに、テルヘルからの依頼は魅力的だったが、リスクも大きかった。
その時、 tavern の入り口から影が伸びてきた。テルヘルが鋭い眼光で、テーブルに近づいてきた。
「準備はいいか?」
彼女は冷酷な声で言った。
「新月の日を狙って、明日の夜に出発だ。」
ラーンの顔色は青ざめた。新月の日…つまり、視界が極端に悪くなる夜に遺跡へ行くことになるのだ。危険度が増すことは明白だった。しかし、テルヘルは容赦なく続けた。
「あの遺跡には、ヴォルダンを滅ぼすための鍵がある。我々は必ず手に入れる必要がある…」
ラーンとイシェの表情が暗くなった。彼らはテルヘルの復讐に巻き込まれつつあることを、改めて実感した。