ビレーの夕暮れは、山影に遮られた街角を、古びた石畳と新しいレンガ造りの家々が交互に彩る。ラーンが剣を片手に酒場で豪飲している姿は、まるで古い英雄譚の一コマのようだった。イシェは彼の横でため息をつきながら、テーブルの上の地図を広げた。「また遺跡探検か？ ラーン、いつまでそんなこと続けるつもりだ？」
ラーンの目は輝いていた。「いつか大穴を見つけ出すんだ！ きっとあの遺跡には、俺たちの未来が眠っている！」
イシェは地図に指を走らせた。「この遺跡は、まだ誰も見たことのない場所らしい。危険だって言われているよ。」
「だからこそ面白いだろ！ 新しい発見だ！」ラーンは興奮気味に言った。「それに、テルヘルが報酬を上げてくれたんだぞ？ 今回は大金持ちになれるかもな！」
イシェは諦めたように肩を落とした。テルヘルは謎の多い女性で、その目的は誰にも分からなかった。しかし、彼女の冷酷さと鋭い洞察力は、彼らにとっては頼りになる存在でもあった。
「よし、わかった。今回は私もついていくよ。」イシェは地図をしまうと、ラーンに言った。「でも、約束するぞ。危険になったらすぐに引き返す。」
ラーンの笑みは、夕暮れの街並みに溶けていった。「いいだろう、イシェ。お前も大穴を見つけるチャンスだ！」
翌日、3人はビレーの郊外にある遺跡へと向かった。その入り口には、朽ち果てた石碑がそびえ立ち、忘れられた文明の影を落とす。テルヘルは鋭い目で周囲を警戒しながら歩みを進めた。「ここはかつてヴォルダン帝国が支配していた場所だ。古い記録によると、この遺跡には強力な魔物が封印されているらしい。」
イシェは不安そうに言った。「魔物？そんな危険な場所に、なぜ？」
テルヘルは冷たい視線でイシェを見据えた。「この遺跡には、ヴォルダン帝国を滅ぼす力を秘めた遺物があると噂されている。それが私の目的だ。」
ラーンの表情が曇った。「お前はヴォルダンに復讐したいのか？」
「そうだな。」テルヘルの声は氷のように冷たかった。「そして、そのために必要なものは何でも手に入れる。」
遺跡の奥深くへと進むにつれ、空気は重くなり、不気味な静けさが支配した。壁には奇妙な文字が刻まれ、床には朽ち果てた骨が散らばっていた。ラーンは剣を構え、イシェは緊張した表情で周囲を見回した。
突然、地面が揺れ始めた。壁から不気味な光が漏れ出し、遺跡の奥深くから轟音が響き渡った。
「魔物だ！」テルヘルは叫びながら、剣を抜いた。「準備しろ！」
ラーンとイシェも剣を抜き、敵に立ち向かう覚悟を決めた。彼らの前に、古い文明の影と新たな脅威が立ちはだかっていた。