「よし、行こうぜ!」ラーンの豪快な声がビレーの朝霧を切り裂いた。イシェはため息をつきながら背後についていく。今日も大穴を探す遺跡探検だ。
「本当にあの遺跡で財宝が見つかるのかい?」イシェが疑いの声を漏らすと、ラーンはにやりと笑った。「ああ、きっと見つかるさ!俺の直感は間違えん!」彼はそう言い切るが、イシェにはいつもどこか胡散臭く聞こえる。
今回はテルヘルからの依頼だ。ヴォルダンとの境にある遺跡で、ある遺物を探すという。報酬は破格だが、危険な場所であることは明らかだった。イシェは不安を募らせながら、ラーンと一緒に遺跡へと向かう。
遺跡の入り口には、崩れかけた石碑が立っていた。「ここだ。」テルヘルが呟く。「この遺跡には、ヴォルダンに奪われた大切なものがある」彼女の目は冷たかった。復讐への執念が彼女を燃やしているように見えた。
遺跡内部は暗く湿り気があり、不気味な静けさが支配していた。ラーンは剣を構え、イシェは細心の注意を払いながら進む。テルヘルは先頭を歩いていたが、どこか落ち着きのない様子だった。
「何かあったのか?」イシェが尋ねると、テルヘルは振り返り、「この遺跡には罠があるはずだ」と答えた。「ヴォルダンは慎重な男だ。簡単に見つけられるようなものはない」
彼らは慎重に進んでいくが、何者かの気配を感じた。ラーンの直感は欺瞞ではなかった。
「敵だ!」テルヘルが叫んだ瞬間、影が彼らを襲ってきた。激しい戦いが始まった。ラーンの剣は鋭く、イシェの動きも素早かったが、敵は強靭で数も多かった。
その時、テルヘルが何かを叫んだ。「ここだ!」彼女は石碑に手を伸ばし、そこから光が放たれた。その光は敵を寄せ付けなくなり、彼らを撃退した。
「なんだあれ?」イシェが驚いて言った。
テルヘルは疲れた表情で答えた。「ヴォルダンが恐れているもの。この遺跡の真の姿だ」
そして、彼女は静かに言った。「これで、私は復讐を果たせる」