ビレーの朝焼けが、荒れ果てた遺跡の入り口を赤く染めていた。ラーンは、いつものように寝坊したイシェを無理やり起こし、「今日は大穴が見つかる予感がするぜ!」と豪語した。イシェはいつものように呆れた表情で、「そんなこと言わずに早く準備しろ」と呟いた。
テルヘルは、遺跡の入り口で二人を待っていた。「準備はいいか?」彼女の冷たい視線は、ラーンの無計画さに少しだけ苛立ちを覚えているようだった。
「もちろん、準備万端だ!」ラーンは自信満々に胸を張ったが、イシェは彼の背後から小さくため息をついた。
遺跡内部は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。ラーンの足音は重く響き渡り、イシェの小さな足音はかき消された。テルヘルは二人より少し前を歩いており、時折後ろを振り返って確認しているようだった。
彼らは深い闇の中を進み、崩れかけた石柱や朽ち果てた壁の断片の間を縫うように進んでいった。空気中には、何とも言えない不気味な静けさが漂っていた。
「ここら辺は以前にも来たことがある気がする」イシェが呟くと、ラーンは嬉しそうに「そうか!じゃあ今回は必ず大穴が見つかるぞ!」と叫んだ。しかし、イシェは彼の言葉を無視し、石畳の隙間から何かを拾い上げた。「これは...」
イシェの顔色が変わった。「これは...断片だ」彼女の視線は、遺跡の奥へと伸びていく。
「断片?」ラーンが首をかしげると、テルヘルが静かに言った。「この遺跡には、かつて何か大きなものが存在した可能性がある。そして、その一部がこの断片なのかもしれない」
イシェはゆっくりと頷き、断片を手に握りしめた。「もしこれが本当なら...」
彼女の目は輝き、ラーンの無計画な冒険にも、テルヘルの冷酷な目的にも、まるで別の世界を見ているかのようだった。