ラーンの粗雑な斧が岩壁を砕き、埃が舞い上がった。
「おい、もっと慎重にしろよ!」イシェの声が轟いた。ラーンは苦笑しながら肩をすくめた。
「そう言われてもな、この遺跡は奥深くまで続いとるらしいんだぞ?早く大穴を見つけてやらなきゃ、テルヘルに怒られちまう」
イシェは眉間に皺を寄せた。「大穴なんて、ただの噂だろう。それに、テルヘルには用はない。俺たちを雇ったのは、あの断崖の遺跡を探したいからだ」
「断崖…?」ラーンは一瞬考え込んだ。「ああ、あの急峻な崖に張り付くように建つ遺跡か。確かに危険だな」
テルヘルは二人をじっと見つめていた。「私はこの遺跡から、ヴォルダンが奪ったものを取り戻す必要がある」と彼女は静かに言った。その目は冷たく、まるで断崖の底に沈む影のように暗かった。
「ヴォルダン…」ラーンは言葉を失った。イシェも何も言わなかった。
日が暮れ始め、薄暗い遺跡の中を進む三人の背中は、断崖の険しさに負けじと小さく見えた。