「おい、イシェ、今日は何だ?」ラーンが大きな声で問いかける。イシェは小さくため息をつきながら、食卓に並んだパンとチーズを指さした。「いつものじゃろ? ラーン、もういい加減飽きないか?」 ラーンの顔色が曇る。「だって、テルヘルさんのお金がある限り、贅沢は控えめってなもんだろ? まあ、でも今日は特別だぞ! きっと大穴が見つかる気がするんだ!」
イシェは眉をひそめた。ラーンはいつもこうだった。遺跡探検で財宝を見つける夢に憑りつかっているが、その前の準備や計画などろくすっぽ抜けている。特に料理の腕前は酷い。イシェはいつも仕方なくラーンの粗末な料理を食べていた。
「まあ、今日はテルヘルさんがどんな料理を出すか楽しみだな」
イシェがそう言うと、ラーンは目を輝かせた。「ああ、そうだ!テルヘルさんの料理は最高だ!」
テルヘルはいつも遺跡探検の報酬として、高価な食材を手に入れてきてくれた。彼女は料理も得意で、巧みな手さばきで様々な料理を作り出す。イシェはいつも彼女の料理に心を癒されていた。
今日は特に、テルヘルが何日もかけて準備したという特別な料理を用意すると言っていた。イシェは期待と不安で胸がいっぱいだった。ラーンの無謀な行動に巻き込まれてしまうこともあるが、彼と共にいることで、自分の人生にも少し彩りが加わるような気がしていた。
「よし! 行くぞイシェ!大穴を見つけて、テルヘルさんに最高の食材をプレゼントしよう!」
ラーンは再び元気いっぱいに叫び、イシェは小さく頷いた。二人は遺跡へと向かった。彼らの後ろには、テルヘルの料理が待っている。それはまるで、冒険の終わりに待つ、ささやかな安らぎのようだった。