「おい、イシェ、今日は何だ?」ラーンが寝起きの目をこすりながら言った。イシェは簡易な台所で火を起こし、鍋を温めていた。「いつものように、野菜と肉だ」と答える。ビレーの遺跡探索は危険だが、食料には事欠かない。
「いつも同じじゃ飽きないか?」ラーンが不満げに言った。「もっと豪華なのを食べたい。獣の丸焼きとか…」
イシェは苦笑した。「そんな贅沢なものは無理だ。それに、テルヘルは金にうるさいだろう」
テルヘルはいつも高額な報酬を要求する。遺跡探索で得た遺物は全て彼女のものになる代わりに、日当と食料を提供してくれるのだ。
「あいつは一体何を探しているんだ?」ラーンが呟いた。「あんなに執念深いのは何か理由があるはずだ」
イシェは何も言わなかった。テルヘルの過去は謎に包まれていた。ただ、ヴォルダンへの復讐を誓うという強い意志だけは感じ取れた。
「今日はどこ行くんだ?」ラーンの声が響く。イシェは地図を広げ、指で遺跡の場所を示した。「今回は北東部の廃墟だ。噂によると、そこには貴重な魔鉱石があるらしい」
ラーンは目を輝かせた。「よし、行こう!大穴が見つかるかもしれない!」
イシェはため息をついた。ラーンの楽観主義に振り回されるのも疲れたが、彼と一緒にいると何かが起こるような予感がした。
遺跡へと続く道を進む三人。イシェは、テルヘルが持ち歩いている小さな包みをチラリと見た。中には、見慣れない香辛料が入っていた。今日の夜ご飯、少し特別な料理になるかもしれない。