ビレーの酒場「荒くれ者の巣」の薄暗い隅で、ラーンがイシェに怒鳴っていた。
「おい、イシェ!あの地図は明らかに偽物だぞ!」
イシェは静かに、しかししっかりとラーンの目をじっと見つめた。「偽物だと断言できるのか? ラーン、私たちは文献を頼りに遺跡を探していることを忘れているんじゃないか?」
ラーンの怒りは少し収まった。彼はテーブルに置かれた粗雑な地図を指さした。「この地図は明らかに古い文献と矛盾してるぞ。それに、あのシンボル…見たことあるか?」
イシェは地図に視線を落とす。確かに、地図には奇妙なシンボルが記されていた。それは古代文明の文献にも記されている、謎多き「禁断の領域」を象徴するものだった。「…確かに、古い文献にはこのシンボルについて触れられていない。」
ラーンが興奮気味に言った。「ほら、やっぱり偽物だろ!テルヘルは俺たちをだました!」
イシェは冷静さを保った。「待て、ラーン。結論を急ぐな。文献には、このシンボルに関する情報はほとんどない。もしかしたら、新たな発見につながる可能性もある。」
ラーンの眉間にしわを寄せた。「新たな発見か…でも、テルヘルには嘘をつかれてるかもしれないんだぞ!」
イシェは深呼吸をして言った。「確かに、テルヘルの目的は不明だ。しかし、私たちも彼女と同じように遺跡を探していることを忘れてはいけない。このシンボルが真実を明らかにする鍵になるかもしれない。」
ラーンは渋々頷いた。彼の心には不安が渦巻いていたが、イシェの冷静な分析に押されるように、地図を再び見つめた。