ビレーの市場は活気に満ち溢れていた。ラーンはイシェに声をかけながら、賑わう人々を縫うように歩いた。
「おい、イシェ!今日はいい日になりそうだな!」
ラーンの顔にはいつもの自信に満ちた笑顔が浮かんでいた。しかし、イシェの表情は曇り気味だった。
「いい日になるかどうかはわからないよ。テルヘルがまた難題を出してくるかもしれない」
イシェは冷静に言った。テルヘルの依頼はいつも危険を伴い、報酬も決して多くはない。
「大丈夫だ、イシェ。俺たちにはテルヘルがいるんだぞ。それに、今回は何か大物を掘り当てられる気がするんだ!」
ラーンの言葉に、イシェは少しだけ安心した。
彼らはテルヘルの指定する場所にたどり着いた。そこはビレーから程近い遺跡だった。かつて栄華を誇った文明の残骸が、今もなおその姿を留めている。
「よし、今回はこの遺跡だ。ここには古代の技術に関する記録が残されているはずだ。それが我々の復讐の鍵となる」
テルヘルは鋭い目を光らせて言った。彼女の言葉には強い意志が込められていた。
ラーンとイシェは遺跡に足を踏み入れた。そこは暗くて湿った空間だった。壁には謎の文字が刻まれており、床には崩れかけた石畳が広がっていた。
「注意しろ、ラーン。ここは危険だぞ」
イシェは警戒しながら周囲を見回した。ラーンの無謀な行動をいつも心配しているのだ。
「わかった、わかった。イシェ、お前はいつも心配性だな」
ラーンは笑いながら言った。しかし、彼の目は真剣に遺跡の中を探していた。
彼らは遺跡の奥深くへと進んでいった。やがて、彼らは巨大な石板を発見した。その石板には複雑な図形が刻まれており、まるで古代文明の知識を秘めたかのように感じられた。
「これは…!」
テルヘルは石板を指さして言った。彼女の目は興奮で輝いていた。
「これは古代文明の技術に関する記録だ!我々の復讐に必要となる情報がここに記されている!」
テルヘルの言葉に、ラーンとイシェも興奮した。彼らは古代文明の技術を手に入れることで、ヴォルダンに復讐を果たせるかもしれないのだ。
しかし、その時、遺跡の奥から不気味な音が聞こえてきた。それはまるで獣の咆哮のようなもので、彼らの背筋を凍りつかせた。