ビレーの酒場「荒くれ者」の賑やかな喧騒の中に、ラーンはイシェの眉間に浮かぶ皺をじっと見つめていた。「またあの顔か？」とラーンが言うと、イシェはため息をついた。「テルヘルに頼るってのは、結局俺たちの足元をすくうことになるんじゃないのか？あの女は本当にビレーのことを考えているのか？」
ラーンの言葉には少しの皮肉混じっていた。テルヘルが持ち出すのはいつも高額な報酬と危険を伴う依頼ばかりだ。今回はヴォルダン遺跡の奥深くに眠るという、古代文明の秘宝探しの依頼だった。
「確かにテルヘルはビレーのことを考えているのかどうかはわからない」ラーンはそう言った。「でも、あの女には何かがあるんだ。ヴォルダンに全てを奪われたって言うし…」
イシェはラーンの言葉を遮った。「それはただの言い訳じゃないか？俺たちは遺跡探索者だ。危険を伴う仕事が当たり前だって分かっているはずだろ？」
「そうだな」ラーンは立ち上がり、テーブルを叩いた。「俺たちはビレーのために戦ってきたんだ！あの女を利用するのも、ビレーを守るためなら仕方あるまい！」
イシェはラーンの熱意に圧倒されて、結局頷いた。二人は酒を飲み干して、テルヘルの待つ遺跡へ向かった。
ヴォルダン遺跡の入り口は、かつて栄華を極めた古代文明の門が崩れ落ちた場所だった。遺跡には様々な文化が織りなす謎が残されており、その奥深くには秘宝があると信じられていた。
ラーンとイシェはテルヘルと共に遺跡に足を踏み入れた。彼らは互いに助け合いながら、遺跡の複雑な迷路を進んでいった。古代の壁画や彫刻は、かつて栄えた文明の文化を物語っていたが、同時に危険をもたらす罠も仕掛けられていた。
「ここは一体…？」イシェは壁画に描かれた奇妙な儀式を眺めて呟いた。「ヴォルダンの人々が崇拝していた神なのかもしれない…」
テルヘルは冷静に言った。「この遺跡には多くの謎がある。だが、我々は秘宝を求めているのだ。それを見つけ出すために、私たちは協力しなければならない。」
彼らは深く暗い通路を進み、ついに秘宝の部屋へとたどり着いた。そこには、輝く宝石で飾られた黄金の祭壇が置かれていた。
「見つけたぞ！」ラーンは興奮気味に叫んだ。
しかし、その瞬間、床が崩れ、ラーンとイシェは深い穴の中に転落した。
「ラーン！イシェ！」テルヘルの悲痛な叫びが響き渡った。
穴の底で、ラーンは意識を朦朧とする中で、イシェの声を聞いた。「大丈夫か？ラーン…」。そして、かすかに聞こえるテルヘルの声がした。「待て！俺は必ずお前たちを助け出す…」