ビレーの朝焼けは、山肌を赤く染めていく。ラーンが寝起きのイシェを揺すると、彼女は眠たい目をこすりながら立ち上がった。「今日はどこへ行くんだ？」「あの東の山にある遺跡だ。テルヘルが新しい情報を入手したらしい」ラーンの声にはいつもの高揚感があった。
イシェは静かに朝食のパンを噛み砕く。テルヘルの情報はいつも正確だが、その裏に何かあるような気がしてならない。「一体何のためにヴォルダンと戦うのか…」「お前が言うように、あの女は目的のためなら手段を選ばない」ラーンは苦い顔をした。「でも、俺たちは遺跡探しの仕事だ。テルヘルが何を考えているかは知らねえ」イシェは深くため息をついた。
遺跡への道は険しく、太陽の光も届きにくい。ラーンの足取りは軽快だが、イシェは息を切らしながら進む。テルヘルは二人よりも前に進んでおり、時折振り返り、冷たい視線を送ってくる。「あの女…」イシェはラーンに小声で言った。「何か隠し事がある気がする」ラーンは苦笑した。「いつもそう思ってるだろ。でも、俺たちは彼女がくれた報酬で生きてるんだ」
遺跡の入り口には、苔むした石造りの門があった。イシェは慎重に石畳を調べると、小さな光る結晶を見つけた。「これは…」イシェの瞳孔が開き、ラーンの顔色も変わった。それは、ヴォルダンが信仰する神殿で見つかるという伝説の聖石だった。
「これは…！」ラーンの声は興奮で震えていた。「大穴だ！」テルヘルはゆっくりと振り返り、口元を歪ませた笑みを浮かべた。「そうだな、ラーン。これで我々の計画は一歩前進だ」イシェは二人の姿を見つめながら、胸の奥に冷たいものが広がっていくのを感じた。