ラーンの大声がビレーの朝の静けさを切り裂いた。「イシェ、今日はあの遺跡だ!あの噂の!」
イシェは眠たい目を擦りながら、ラーンが興奮気味に広げた地図を眺めた。確かに、その遺跡は周辺一帯では特に危険な場所として知られていた。散発的に報告される怪奇現象と、謎めいた仕掛けの数々。
「またかよ、ラーン。あの遺跡は危険だって聞いただろ? 今回はパスだ」
イシェがそう言うと、ラーンは肩を落とした。「でも、イシェ! あの遺跡には必ず大穴があるって噂だよ! 俺たちの運命を変えるチャンスなんだ!」
「運命? 君の運命は、まず腹を満たすことじゃないのか?」
イシェの言葉にラーンの顔は曇った。確かに、最近は仕事が散発的で、食料さえままならない日々が続いていた。
その時、背後から冷たい声がした。「その噂を聞いたのは私です」
ラーンとイシェが振り返ると、そこにテルヘルが立っていた。鋭い眼光で二人を見つめる彼女の顔には、何とも言えない表情があった。
「私はヴォルダンに全てを奪われた。復讐のため、あの遺跡にあるという失われた遺物を手に入れなければいけないのです」テルヘルは静かに言った。「もし、あなたが二人とも協力してくれるなら、報酬は惜しみません」
ラーンの目は輝き、イシェはため息をついた。散発的に仕事が入るだけでは不安定な日々を送っている二人は、テルヘルの申し出にわずかな希望を感じていた。
「わかった。あの遺跡に行くぞ!」
ラーンがそう言うと、イシェも頷いた。三人は、危険な遺跡へと向かう道に足を踏み入れた。