「よし、今回はあの崩れた塔だな！」 ラーンの目が輝き、イシェの眉間にしわが寄った。「また危険な場所を選んだな。あの塔は噂では魔物が棲んでいるって聞いたぞ」。ラーンはイシェの言葉に耳を貸さず、剣を構えて塔の入り口へ踏み込んだ。「待て！ちゃんと計画を立てないと…」 イシェの抗議も虚しく、ラーンは塔の中へと消えていった。テルヘルは静かに微笑んだ。「計画なんて必要ないわ。彼らが失敗すればいいのよ」。
塔内部は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。崩れた石畳の上を進んでいくと、壁に奇妙な文様が刻まれていた。ラーンが近づこうとした瞬間、床が崩れ、深い穴に落ちてしまった。「ラーン！」 イシェの叫びが響き渡る。慌てて穴をのぞき込んだイシェは、ラーンの姿を見つけられなかった。「やられた…」 イシェは絶望的な気持ちに襲われた。
テルヘルは冷静に状況を判断した。ラーンが落下の衝撃で致命傷を負った可能性もある。しかし、彼を諦めるわけにはいかない。なぜなら、彼女にとってラーンはヴォルダンへの復讐を果たすための重要な駒だからだ。彼女は深呼吸をして、イシェに指示を出した。「急いで、あの文様を調べなさい。何か手がかりがあるかもしれない」。イシェはテルヘルの言葉に従い、壁の文様に目を凝らした。
しばらくして、イシェは奇妙な発見をした。文様の配置が特定の順序で並んでいることに気づいたのだ。彼はそのパターンを解読し、塔の奥深くにある隠し部屋の存在を知る。そこにはラーンが落ちた穴への道が開かれていた。イシェは安堵のため息をつき、テルヘルと共に隠し部屋へと向かった。
しかし、部屋に辿り着いた時、彼らの前に立ちはだかる影があった。それは、ヴォルダン兵士だった。「お前たちは…」 テルヘルは剣を抜き、戦闘態勢に入った。イシェも慌てて剣を取り出したが、彼の心には不安が渦巻いていた。ラーンはいずこに？そして、この戦いを生き延びることができるのか？ 敗北の影が彼らを覆い始めていた。