「よし、今日はここだな」。ラーンが地図を広げ、指さした場所は、ビレーから北へ三日の道のりにある崩れた遺跡だった。イシェは眉間に皺を寄せた。「また危険な場所か？ それに、あの辺はヴォルダンの兵が頻繁に出没するって聞いたぞ」
「心配すんなよ、イシェ。テルヘルが言うには、この遺跡には未開の通路があるらしいんだ。そしたら大穴が見つかる可能性もあるぞ！」ラーンは目を輝かせた。イシェはため息をつきながら、背負った荷物に手を当てた。「準備はいいか？ ラーン」。
テルヘルは静かに頷き、鋭い視線で周囲を警戒していた。彼女はヴォルダンへの復讐を果たすために、この遺跡から何か手に入れたいと考えていた。強力な武器でも、隠された情報でも構わない。何よりも、ヴォルダンに痛手を負わせるための力が必要だった。
三人は崩れた石柱の間を慎重に進んでいった。遺跡の空気は冷たく湿り、不気味な静寂が支配していた。ラーンの足音だけが、石畳に鈍く響いていた。「ここら辺で何かあるんじゃないか？」ラーンが壁を叩くと、石が崩れ落ちた。その奥には、漆黒の空間が広がっていた。
「これは…！」イシェは息をのんだ。それは巨大な扉だった。扉には複雑な模様が刻まれており、まるで生きているかのように脈打つような光が放出されていた。
「これは…」テルヘルは目を細めた。「これこそ、私が探していたものだ」。彼女は扉に手を伸ばし、ゆっくりと開け始めた。扉が開かれると同時に、激しい光が放出され、三人は目を塞いだ。そして、扉の向こう側から、奇妙な音が聞こえてきた。それは、まるで生きた肉が裂けるような音だった。
ラーンは剣を抜き、イシェは震える手で杖を構えた。テルヘルは冷静に状況を見極めていた。「これは…」彼女は呟いた。「ヴォルダンが隠していたものなのかもしれない」。