「よし、入ろう！」ラーンの豪快な声が響き渡り、イシェはため息をついた。いつも通り、計画性ゼロの行動だ。ビレーの遺跡は既に何度も探検済みで、残っているのは些細なものばかりだろうとイシェは思っていた。
だが、テルヘルは違う表情をしていた。「この遺跡には、以前から噂されていたものがある。地図に記されていない隠し部屋だ」彼女の瞳に燃えるような光が宿る。「もしそれが本当なら、ヴォルダンとの戦いに役立つ情報が得られるかもしれない」
ラーンの耳は、テルヘルの言葉にだけ反応した。「隠し部屋か！よし、俺たちを先頭につけろ！」
イシェは諦めたように頷いた。ラーンの興奮ぶりを見れば、テルヘルの言葉を信じているのだろう。そして、彼女もまた、その言葉に少し期待を感じていた。
遺跡の内部は暗く湿っていた。石畳の上には苔が生えており、足元が滑りやすい。イシェは慎重に歩を進め、ラーンとテルヘルが進むのをじっと見つめていた。
突然、ラーンの剣が壁を叩きつけた。「ここだ！」彼の声に興奮が混じる。壁にはひび割れが走っており、その隙間からわずかに光が漏れている。
「待て、ラーン！」イシェは彼の手を掴んで引き戻した。「落ち着いて、罠の可能性もある」
テルヘルは冷静に状況を判断していた。「確かに、慎重に進めるべきだ。イシェ、お前は後ろから警戒しながら進むように」
イシェは頷き、剣を構えたままラーンの後ろを歩いた。テルヘルが壁のひび割れに手を当てると、石板がゆっくりと動いた。その奥には狭い通路が広がっていた。
「よし、攻略だ！」ラーンは先頭を切って通路に足を踏み入れた。イシェは彼を見つめながら、わずかな不安を感じた。この遺跡から何かを手に入れるためには、ラーンの無茶な行動を止める必要があるかもしれない。そして、テルヘルの真意もまだ見通せない。
だが、彼女にはもう後戻りできない。この遺跡攻略、そしてヴォルダンとの戦いに巻き込まれてしまったのだ。