ラーンが石ころを蹴飛ばすと、イシェの眉間にしわが集まった。「またか、ラーン。あの遺跡は危険だって言っただろう」。ラーンの足は止まる。「だが、イシェ。あの地図には記されてない場所があるんだぞ? きっと何かあるはずだ!」 イシェはため息をつきながら、背負った道具袋を整理した。「わかった、わかった。でも、今回は本当に気をつけろよ。テルヘルも言ってたじゃないか、ヴォルダンが動き出してるって」。
ビレーから少し離れた場所に建つ遺跡は、荒れ果てた石造りの建物群だった。かつて栄えた文明の痕跡が、今や朽ち果てようとしていた。ラーンは興奮した様子で、崩れかけた石柱をよじ登り始めた。「ほらイシェ!見てみろ!この彫刻…何か書いてあるぞ!」 イシェは慎重に近づき、彫刻を確かめた。「確かに…これは…?」彼女の表情が硬くなった。「これはヴォルダン軍の紋章だ」。ラーンの顔色が変わった。
「ヴォルダン…まさか…」その時、背後から不気味な音が響いた。金属音と足音だ。振り返ると、黒いマントをまとった影たちが彼らを囲んでいた。テルヘルが剣を抜くと、鋭い声で言った。「ヴォルダンの兵士か!準備しろ!」 ラーンは慌てて剣を構えたが、イシェは冷静に状況を分析した。「これは罠だ。彼らは僕たちを誘い出したんだ」。彼女はテルヘルに呼びかけた。「テルヘル、遺跡の奥へ逃げるんだ! 私たちが Distractionsになる!」 テルヘルは一瞬迷ったが、イシェの決意の強さに頷き、遺跡内部へ走り込んだ。ラーンとイシェは残された兵士たちを相手にすることに。
激しい攻防が始まった。ラーンの剣は素早く、イシェの動きは正確だった。しかし敵は多く、次第に追い詰められていく。イシェは苦しい表情で言った。「ラーン…もう無理だ…」。ラーンは目を赤くして叫んだ。「諦めるな! 僕は必ずお前を守り出す!」 その時、遺跡から激しい光が放たれ、地面が激しく揺れた。ラーンの足元が崩れ、彼は転落しそうになった。イシェは咄嗟にラーンの腕をつかみ、引き上げた。「ラーン!大丈夫か?」 イシェは息を切らしながら言った。「あの光…何か変わった気がする」。
崩れかけた遺跡の中、テルヘルは驚愕の光景を目の当たりにした。壁一面に広がる壁画には、かつての文明が秘めていた高度な技術と、それらを制御する装置が描かれていた。そして、その中心には、脈動するような光を放つ球体があった。それは、改良された古代の兵器だったのだ。テルヘルは自分の計画を思い直し始めた。「これは…ヴォルダンにとって危険すぎる。私は…」彼女は深く息を吸い、決意を固めた。
ビレーに戻ったラーンとイシェは、テルヘルが遺跡から持ち帰った物を見て言葉を失った。それは、古代文明の技術を応用した改良された武器だった。テルヘルは言った。「これはヴォルダンに渡してはならない。我々はこれを利用して、彼に対抗する必要がある」。ラーンの顔には迷いがあったが、イシェは静かに頷いた。「わかった…私たちと共に戦おう」。そして、三人は新たな戦いに身を投じる決意をした。