ラーンの粗雑な剣の扱いがイシェの神経を逆立てた。埃っぽい遺跡の奥深く、崩れそうな石の間を進むにつれて、イシェはいつも通りの苛立ちを感じていた。
「おい、ラーン。そっちに気をつけろ」
イシェの注意も虚しく、ラーンの剣が壁に引っかかり、石塵が舞い上がった。
「うるせーな、イシェ。そんなことでいちいち怒るんじゃないよ」
ラーンは不機嫌そうに言った。だが、イシェの鋭い視線を感じると少しだけ態度を軟らかくした。
「ほら、テルヘルだって言ってるだろう。今回は慎重にやらないと」
イシェは振り返り、テルヘルの方を見た。彼女は遺跡の奥深くで何かを調べているようだった。影のある顔つきから、彼女の心の中にある暗い過去を垣間見ることができた。イシェはテルヘルの目的を完全に理解していなかったが、彼女がヴォルダンに復讐するという強い意志を持っていることは確かだった。
「この遺跡には何かあるはずだ」
テルヘルは振り返り、鋭い視線でラーンとイシェを見据えた。
「ここにはヴォルダンが隠した何かがある。それを手に入れるために、私たちは協力する必要がある」
ラーンの無邪気な笑顔に反して、イシェはテルヘルの言葉に重みを感じた。彼らは単なる遺跡探索者ではなく、ある種の革命の火種となっているのかもしれない。
その時、突然、床が崩れ始めた。ラーンが慌てて後ろへ跳ね返ると、イシェはバランスを崩し、深い穴の中に転落した。
「イシェ!」
ラーンの叫びが響き渡る中、イシェは暗闇に呑み込まれていくのを感じた。そして、かすかに聞こえるテルヘルの冷たい声。
「これは偶然ではない。改正の時が来た」