ラーンが遺跡の入り口で巨大な石扉に手をかけようとした時、イシェは彼の腕を掴んだ。
「待て、ラーン。あの紋章を見たことがあるぞ。古い文献に載っていた、ヴォルダン王家のcrestだ。ここには入っちゃいけねぇ。」
ラーンの顔色が変わった。「そんなの知るか!いい機会だ、宝の山が入ってるかもな!」
イシェは冷静に反論した。「ヴォルダンがここに何の目的で遺跡を築いたのか、よく知らないだろう?危険すぎるぞ!ましてやテルヘルが言うように、ここはヴォルダンと何か関係がある遺跡だとしたら…」
ラーンの目は少しだけ揺らいだ。テルヘルは冷静に言った。「イシェは正しい。今回は様子を見るべきだ。この遺跡には何か秘密があるのは間違いない。情報収集を優先しよう。」
「……わかった」ラーンは渋々頷いた。しかし、彼の目はまだ遺跡の奥深くに宿る謎めいた輝きを見つめていた。
テルヘルは彼らに振り返り、「我々は目的のためなら手段を選ばない。だが、この遺跡は単なる財宝を求めるだけの場所ではないようだ。何か大きな秘密を握っている。そして、それは私たち自身をも変えるかもしれない」と告げた。
その夜、ラーンは眠れなかった。イシェの警告とテルヘルの言葉が彼の頭をよぎる。遺跡の奥底には、単なる財宝ではなく、自分たちの運命を変えるようなものがあるのかもしれない。
彼は静かに立ち上がり、窓の外を見上げた。そこには満月が輝いており、その光はまるで彼を遺跡へと誘うように感じた。改変が起こり始めていることをラーンは本能的に感じ取っていた。