「おい、イシェ、今日は何が出るかな？」ラーンが陽気に叫んだ。ビレーの朝焼けを背に、遺跡へと続く石畳の道を歩いている。イシェはいつものように眉間に皺を寄せながら地図を広げていた。「ラーン、そんなこと考えても仕方ないでしょう。遺跡はいつもと同じように、謎と危険でいっぱいの場所です」彼女は冷静に言った。
「そうか？でも、いつか必ず大穴が見つかるはずだ！」ラーンの明るい声は、イシェの心を少しだけ温めた。二人の後ろを、テルヘルがそっと歩いていた。彼女の顔色は硬く、目は遺跡の奥底を睨んでいるようだった。
今日は以前から噂されていた「失われた支族の墓」を目指すことになっていた。その場所は、ヴォルダンとの国境近くにあり、かつて強力な支族が栄えた場所と伝えられていた。遺跡探索を続けるうちに、ラーンはテルヘルにこの支族について尋ねた。「あの支族って、どんな人々だったんですか？」
テルヘルは一瞬だけ視線をラーンに向け、「彼らについては、ほとんど何も知られていません」と答えた。「ただ、強力な力を持っていたことは確かです。そして、ヴォルダンに滅ぼされたと言われています」彼女の口調は冷たかった。
遺跡の入り口には、奇妙な紋章が刻まれた石門があった。イシェが慎重に石門を開けると、そこは薄暗く湿った通路だった。ラーンの足元には、まるで警告のように、何かの骨が散らばっていた。「気をつけろよ、ラーン」イシェが小声で言った。
彼らは慎重に奥へと進んでいった。壁には奇妙な絵画が描かれており、失われた支族の生活の様子や儀式の様子が垣間見えた。しかし、そこにはどこか不気味な雰囲気が漂っていた。
通路の奥には、広大な石室があった。中央には巨大な祭壇があり、その上には金色の箱が置かれているのが見えた。ラーンは興奮した様子で駆け寄ろうとしたが、イシェが彼を引き止めた。「待てよ、ラーン！何か変だ」
その時、床から黒い煙が立ち上り、部屋中に広がった。煙の中から、何かの声が聞こえてきた。それは、まるで古代の呪文を唱えるような、不気味な声だった。ラーンの顔色が青ざめた。「イシェ、これは...！」
テルヘルは冷静に剣を抜いて周囲を見渡した。「支族の守護霊だ。我々を排除しようとしている」彼女の目は鋭く光っていた。
三人は、失われた支族の墓を守る守護霊との戦いに挑むことになったのだ。