ビレーの朝露が乾き始める頃、ラーンとイシェはテルヘルの指示に従い、薄暗い森の奥へと足を踏み入れていた。目的地の遺跡は、周囲の木々よりも高くそびえる巨大な岩壁に覆われた、まるで巨大な獣の背中に scheint と思わせるような造りだった。
「ここか…何か不気味だな」イシェは眉間に皺を寄せた。「いつもより静かすぎるし…」
ラーンの視線は遺跡の入り口付近に集中していた。そこには複雑な模様が刻まれた石門があり、まるで生きているかのように微妙に脈打しているかのようだった。「よし、行こう!イシェ、後ろを固めて!」
テルヘルは先頭を歩きながら、鋭い視線で周囲を警戒した。彼女の足音は地面に吸い込まれるように消え、森の静寂に溶け込んでいた。
遺跡内部は薄暗く、湿った空気中にカビ臭が漂っていた。壁には奇妙な文様が刻まれており、まるで何かの生き物が石に彫られたかのように見えるものもあった。イシェは背筋をゾッとするような感覚に襲われた。
「ここは…何か悪寒がする…」
ラーンの足音は軽やかで、まるでこの不気味な空間にも馴染んでいるようだった。「そんなこと言ってる場合じゃないぞ!早く遺物を見つけないと、テルヘルが怒るぞ!」
彼らの前に広がる空間は巨大な石柱で支えられ、天井からは鍾乳石が垂れ下がっていた。そして、その中央には、まるで祭壇のように造られた石台があった。
「あれ…?」イシェの声が震えるように小さく聞こえた。「あの石台の上にあるのは…」
石台に置かれているのは、まるでガラス細工の様に繊細な模様が施された球体だった。それは静かに光を放ち、その輝きは周囲の空気を歪めていた。
その時、ラーンの背後から不気味な音色が響き渡った。まるで獣の唸り声のような、低く重たい音が、遺跡全体にこだました。
「何だあの音…?」ラーンは振り返ったが、そこには何もいなかった。しかし、彼の心臓は激しく鼓動し、背筋に冷たい汗が流れていた。
イシェは石台に置かれている球体に目を向け、その輝きをじっと見つめていた。「これは…何か変だ…」
その時、球体は突然激しく光り始めた。そして、その光は瞬時に遺跡全体を包み込んだ。
ラーンとイシェは目を細めたが、その瞬間、彼らはまるで別の場所にワープしたかのように感覚が混乱した。意識が朦朧とする中、彼らを包む光の中に、何か巨大な影が浮かび上がってきたように見えた…。