「よし、今日はあの崩れかけた塔の奥深くまで行ってみようぜ！」ラーンがいつものように豪語した。イシェはため息をつきながら、「また遺跡探検か…一体いつになったら大穴が見つかるんだ」と呟いた。ラーンの夢を叶えるために、そして自分自身にも少しの希望を託して、彼女は今日も遺跡に足を踏み入れる。
彼らはテルヘルと共に、ビレーからほど近い山中に位置する遺跡へ向かった。テルヘルはいつも冷静沈着で、遺跡探査に必要な知識や交渉術を駆使し、彼らの頼れる存在だった。だが、今日は彼女の表情が硬く、何かを隠しているようだった。
崩れかけた塔の内部は暗く湿り、埃っぽい空気が肺に張り付く。ラーンは興奮気味に剣を振るいながら、「きっとここには何かがあるはずだ！」と叫んだ。イシェは彼の様子を見て、いつもより緊張した気持ちになった。テルヘルは二人の前に進み、古びた石板に触れながら「この遺跡には、ヴォルダンが恐れる秘密が眠っている」と呟いた。
ラーンの目の輝きが増し、イシェは不安を感じながらも、テルヘルの言葉に引き込まれていった。彼らは塔の奥深くへと進んでいく。やがて、壁一面に描かれた神秘的な模様を発見した。テルヘルは目を輝かせ、「これはヴォルダンを滅ぼす鍵になるかもしれない」と興奮気味に言った。
その時、崩れかけた天井から石が落下し、ラーンを直撃した。イシェは驚きで声を上げて、ラーンの元に駆け寄った。彼は意識を失っていた。イシェはパニックになりながらも、テルヘルに助けを求めた。
テルヘルは冷静さを保ち、ラーンの傷を応急処置した後、「この遺跡から脱出するんだ」と決意した。彼女はラーンを背負い、イシェと共に塔から逃げ出した。
外に出た時、夕暮れのオレンジ色の光が空一面に広がっていた。イシェは深い安堵感に包まれた。だが、同時に、テルヘルの目的を深く考え始めた。ヴォルダンとの復讐のために、彼女はどんなことをするつもりなのか？そして、ラーンと自分は、その計画に巻き込まれることになるのか？
イシェは不安な気持ちを抱きながら、夕陽が沈むビレーの街並みを眺めた。