ラーンが巨大な石扉に剣を突き立てた瞬間、埃が舞った。イシェは咳き込みながら「またか?」と呟いた。扉は budge しなかった。
「よしっ、イシェ、力を貸してくれ!」ラーンの声はいつもより高かった。イシェはため息をつきながら、ラーンの肩に手を置いた。二人で力を合わせて扉を押すと、ようやくわずかに開いた。
「やったぜ!」ラーンは大喜びで扉の隙間を覗き込んだが、その顔色が一瞬で変わった。「あれ…?」
扉の先には広がるはずの遺跡の内部ではなく、真っ黒い壁があった。イシェも覗き込んでみる。壁は滑らかで、まるで漆黒の鏡のように光を反射していた。
「これは…」イシェは言葉を失った。ラーンは壁を叩いてみたが、音はしない。不吉な静けさが広がっていく。
その時、テルヘルが背後から低い声で言った。「何だ、これは?」
ラーンの肩越しに、テルヘルは壁を見つめていた。彼女の瞳には、いつもの冷たさではなく、何か別の感情が宿っていた。それは…不安か?それとも恐怖か?
イシェはテルヘルの表情を見て、自分の胸にも冷たいものが込み上げてくるのを感じた。この遺跡は、彼らに想定外の何かを突きつけているようだった。そして、その何かは、彼らの摩擦をさらに激化させるものだと確信した。