摂政

君主の代わりに政治を行う人。

物語への影響例

影の権力者としての存在。表と裏の二重構造。真の権力の所在と形式の乖離。

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「よし、今回はあの崩れた塔だ」ラーンが目を輝かせ、イシェの地図を指さした。

「また危険な場所かい? ラーン、あの塔は崩落寸前だって聞いたわよ」イシェは眉間にしわを寄せた。「それに、ヴォルダンとの国境に近いってのも不安じゃない?」

「大丈夫だ大丈夫!俺が守るから」ラーンは胸を張った。イシェの心配をよそに、彼は遺跡探索に燃えていた。莫大な財宝を得て、ビレーから出て、自由になる。それが彼の夢だった。

「よし、準備はいいか?」テルヘルは鋭い眼光で二人を見据えた。「今回は特に注意が必要だ。ヴォルダンが動き出しているという情報が入っている。遺跡周辺には彼らの兵士がいる可能性が高い」

イシェは小さくうなずいた。テルヘルの言葉はいつも重かった。彼女はヴォルダンへの復讐を誓う謎の女性で、その目的のためならどんな手段も厭わなかった。ラーンとイシェは彼女に雇われて遺跡探索を行っていたが、彼女の本心は最後まで分からなかった。

崩れた塔の入り口に立って、ラーンの心臓は高鳴っていた。塔の中は暗く、埃っぽい空気が充満していた。石畳の上には苔が生え、崩れかけた壁からは風だけが吹き抜けていた。

「気をつけろ」テルヘルが小声で言った。三人は慎重に塔の中へ足を踏み入れた。

塔の奥深くで、彼らは古代の書物と奇妙な金属製の装置を発見した。それは明らかにかつて高度な文明が存在していた証だった。イシェは興奮を抑えきれず、書物のページをめくり始めた。ラーンは好奇心旺盛に装置を調べ、テルヘルは冷静に周囲を警戒した。

その時、突然、塔の奥から激しい音が響き渡った。何かが崩れ落ちたような音だ。三人は驚いて振り返ると、塔の入り口付近から複数の影が近づいてくるのが見えた。ヴォルダンの兵士だ。

「逃げろ!」テルヘルが叫んだ。三人は慌てて塔の中を駆け巡ったが、兵士たちは執拗に追いかけてきた。ラーンは剣を抜き、兵士たちに立ち向かった。イシェも必死に抵抗したが、兵士たちの数は多すぎた。

その時、テルヘルは何かを呟いた。彼女の瞳が不気味な光を放ち、周囲の空気が歪んだ。すると、塔の天井から大量の石が落下し、兵士たちを押しつぶした。

「行くぞ!」テルヘルは叫び、三人は塔の外へと駆け出した。

息を切らしながら、彼らは安全な場所に着いた。振り返ると、崩れ落ちた塔からは煙と塵が立ち上っていた。

「あの…あの女性…」イシェは震える声で言った。「彼女は一体何者なんだ?」

ラーンは何も言えなかった。テルヘルの正体、そしてヴォルダンとの関係。彼には理解できないことが多すぎた。

夜空に浮かぶ満月が、彼らの不安な未来を照らしていた。

「摂政の影は、この国を覆い尽くす」テルヘルは呟いた。その言葉は、ラーンとイシェの心をさらに深く揺さぶった。