ラーンの太い腕が石を抉り落とす音だけが、静かな遺跡の空気を裂く。汗だくになりながら彼は、イシェに「もっと奥へ行くぞ!」と声をかけた。イシェは眉間に皺を寄せながら、「ここは様子がおかしいよ、ラーン。何か変だ」と慎重に言った。だがラーンの耳には届かず、彼は興奮気味に遺跡の奥へと続く通路へ足を踏み入れた。
テルヘルは後ろから二つの影を見つめていた。彼女の視線は鋭く、まるで獲物を狙う獣のようだった。彼女は彼らに「大穴」という餌を与えていたが、真の目的は遺跡の奥深くに眠る何かを手に入れることだった。そのために必要なのは、ラーンの力とイシェの知恵だ。
イシェはラーンの後ろをついていくうちに、奇妙なシンボルが刻まれた壁画に気づいた。それはまるで、何かを「摂取」する様子を描写したかのような不気味な模様だった。彼女は背筋が凍りつくような感覚に襲われた。この遺跡には、単なる財宝以上の何かが眠っているのかもしれない。
その時、通路の奥から低い唸り声と、地面を震わすような重たい足音と共に、巨大な影が姿を現した。ラーンは剣を構え、戦意を燃やし始めた。「よし、イシェ!逃げろ!」 彼の叫びは、恐怖と興奮が入り混じったものであった。しかし、イシェは立ち尽くしていた。彼女は壁画に描かれたシンボルと、今目の前に現れた影を結びつけ始めていた。そして、恐るべき真実を悟り始めたのだ。
テルヘルは冷静さを保ちながら、状況を分析した。この巨大な影がラーンの力では到底太刀打ちできる相手ではないことは明らかだった。だが、彼女はそれを利用するつもりだった。ラーンとイシェを危険にさらすことで、目的の「摂取」に必要なエネルギーを手に入れるのだ。彼女の目は冷たい光を放っていた。