ラーンの大きな手で、イシェの作った地図を広げられる。薄暗い tavern の隅のテーブルの上で、ロウソクの炎が地図の線をゆらめかせた。
「よし、今日はあの崩れた塔だな」
ラーンは目を輝かせた。イシェは眉をひそめた。「また行き慣れた場所？ 何か新しい情報でも手に入ったのか？」
「いや、特に… でもな、あの塔にはまだ謎が残ってるだろ？ あの奇妙な模様の石板、あれが何なのか、気になって仕方ないんだ」
ラーンの言葉にイシェはため息をついた。ラーンの好奇心は、いつも彼らを危険な目に遭わせる元凶だった。だが、イシェ自身も、あの石板の謎を解き明かしたいという気持ちには、少なからず共鳴していた。
「わかったわ、行くけど、今回は慎重にね。あの塔は崩れかけてるし、罠も仕掛けられてる可能性がある」
「わかってるよ、わかってるよ。今回は俺が先導するから安心しろ」
ラーンは胸を張った。イシェは彼の背中に手を当て、小さく頷いた。
tavern から外に出ると、冷たい夜風が頬を撫でた。空には星が輝いていたが、月の光は雲に隠れて薄暗く、辺りは不気味な静けさに包まれていた。三人はビレーの郊外へと歩き出した。
携帯型の懐中電灯を手に、ラーンとイシェは崩れかけた塔の入り口へと続く暗い道を進んでいった。テルヘルは後ろから二人を見つめていた。彼女の目は鋭く、表情はいつもと変わらず冷静だった。
「あの石板は、ヴォルダンとの戦いに繋がる可能性があるかもしれない」
テルヘルが呟いた。ラーンとイシェは振り返り、彼女に驚きの眼差しを向けると同時に、少しだけ恐怖を感じた。
「何の話だ？」ラーンが尋ねた。
テルヘルは口を閉ざしたまま、塔へと続く道を進んだ。三人の影は、月の光のない闇の中で長く伸びていった。