ラーンの巨大なハンマーが石壁を粉砕した。埃が立ち込め、しばらくの間何も見えなかった。イシェは咳き込みながら、「また無駄な力仕事だ」と呟いた。ラーンは鼻で笑い、「大穴を見つけるには、力も必要なんだぞ!ほら、何かあるぞ!」と、崩れた壁の奥を指差した。
そこには、確かに光るものが埋まっているように見えた。イシェが近づいて確認すると、それは小さな水晶だった。小さくても、鮮やかな青色に輝き、まるで生きているかのように脈打つようだった。
「珍しいものだな」イシェは呟いた。「だが、大穴には程遠い」。ラーンの肩が落ち込んだ。テルヘルは冷静に水晶を手に取り、目を細めた。「これはただの装飾品ではない。ヴォルダンの遺跡で見つけたものと酷似している。情報価値は高いだろう」。
彼女は水晶を小袋にしまい、少しだけ微笑んだ。「この程度の成果でも、十分だ」。ラーンの顔色が少し明るくなった。「よし!次の目標はどこだ?もっと深いところへ行くぞ!」
イシェはため息をついた。「いつも通りのラーンだな。だが…」水晶の光が彼女の瞳を揺らすように映り込み、「もしかしたら、この小さな石が、本当に大穴への道を開くかもしれない」。彼女はそう思った。その時、地響きが聞こえた。遠くから、まるで巨人が足踏みをしているような音だ。
「何だあの音…?!」ラーンの顔は青ざめた。「何か来るぞ!逃げろ!」
イシェは振り返ると、ビレーの街に向かって伸びる道に、黒い影が揺れ動いているのが見えた。それは巨大な獣の群れだった。そして、その背後には、ヴォルダンの旗が翻っている。
「ヴォルダン…来たのか…」テルヘルは水晶を握りしめ、静かに言った。「準備はいいか?今こそ、真の大穴が開かれる時だ」。