ラーンが石の破片を蹴飛ばすと、イシェから「また無駄なエネルギーを使うな」と叱られた。いつも通りのやり取りだった。ビレーの遺跡は、かつて栄華を誇った文明の残骸がむき出しになっていて、その構造はまるで巨大な迷宮のようだった。
今日の目標は、遺跡中央部にあるとされる「光る石」だ。テルヘルが持ち出した古い地図によると、そこにはかつての文明の遺産が残されているらしい。ラーンは「大穴」を夢見ていたが、イシェは現実的に考え、遺跡探索で得られる報酬に目を向けていた。
地下深くへ続く通路は、湿った空気と不気味な沈黙に包まれていた。足元には、時折揺れ動く影が映るだけで、ラーンの不安を掻き立てる。イシェは常に周囲を警戒しながら、地図を手に確認を繰り返していた。テルヘルは背後から二人を見下ろすように歩みを進める。彼女の目的は「光る石」ではなく、遺跡の奥深くにある何かだった。
突然、通路が激しく揺れ始めた。天井から埃が降り注ぎ、ラーンはバランスを崩しそうになった。イシェは冷静に状況を判断し、近くの柱に身を隠した。テルヘルは剣を抜き、鋭い視線で周囲を探り始めた。
揺れが収まると、通路の先に奇妙な光が見えた。それは、まるで生きているかのような脈動を放ちながら、ゆっくりと近づいてくるものだった。ラーンの心臓は激しく鼓動し、イシェは息を呑んだ。テルヘルは、その光に向かって歩みを進めた。
「何だあの光…?」ラーンが不安げに呟くと、イシェは彼の手を強く握りしめ、「気をつけろ」と低く言った。彼らは、遺跡の奥底で待ち受ける未知なるものに直面していた。