ビレーの夕暮れは、いつもより早く訪れたように感じた。ラーンが陽炎のように揺らめく街並みを眺めながらそう呟いた時、イシェは眉間に皺を寄せた。
「そんなこと言っちゃっていいのは、お前だけだよな。今日の報酬は、あの遺跡の奥底にある supposed to be とても貴重な遺物が見つかったら、3人で分けるって約束だったはずだろ?」
ラーンの肩越しに、イシェはテルヘルを見つめた。その鋭い視線は、まるで透き通るような夕焼けに照らされた氷柱のように冷たかった。「あの遺跡は、俺たちが探索した中で一番危険なものだったぞ。罠も仕掛けも複雑で、一歩間違えたら命を落とすかもしれない」
テルヘルは、イシェの言葉に少しだけ微笑んだ。しかしその笑顔には、どこか虚しさが漂っていた。「確かに、危険でしたわ。でも、その危険を乗り越えたからこそ、あの遺物が見つかったんじゃないでしょうか?」
ラーンの視線が、テルヘルの胸元にある小さな宝石に釘付けになった。それは、遺跡で発見したばかりの、青く輝く石だった。まるで夜空に浮かぶ月のように、かすかに揺らめいているように見えた。
「この石は、ヴォルダンに復讐するための鍵になるかもしれない」とテルヘルは言った。「そして、その鍵を手に入れたのは、あなたたちのおかげです」
ラーンの心は、激しい高揚感で満たされた。だがイシェは、まだ不安を抱えていた。「でも、あの石が本当にヴォルダンの弱点になるかどうかはわからないんだろ?」
テルヘルの瞳は、まるで深い井戸のように暗く沈んでいった。「それは、これから明らかになるでしょう」と彼女は言った。そして、ゆっくりと立ち上がった。夕暮れの光に照らされた彼女の背中は、どこか孤独に揺らめいていた。