ラーンの大斧が石壁を叩き砕いた。埃が舞う中、イシェは鼻をつまんで「また無駄な力仕事だな」と呟いた。ラーンは得意げに笑った。「ほら、イシェ! これであと少しだぞ!」
だが、開けた先にあったのは、錆びついた小さな宝箱だった。イシェはため息をつきながら箱を開けると、中には幾つかのボタンと不思議な歯車が入っていた。「またこんなものか…」
テルヘルが近づいてきて、箱の中身を興味深そうに覗き込んだ。「これは…珍しい設計だ。ヴォルダン製の物かもしれない」彼女は目を細め、「この歯車は、ある種の力を援用する装置の一部ではないだろうか?」
ラーンは首を傾げた。「援用? なんだそりゃ?」イシェも同様に聞き返した。「つまり、この歯車を使えば、他の何かを操れるということか?」テルヘルはそう答えた。その目は冷たく輝いていた。「例えば、この遺跡の防御システムを…」。
ラーンの顔色が変わった。「おいおい、そんな危険なことをするなよ!」イシェも同意するように頷いた。「いい加減にしろよ、テルヘル。遺跡探索に来たんじゃないんだぞ」
だがテルヘルの目は揺るがなかった。彼女はゆっくりと箱を閉じて言った。「私はヴォルダンに復讐するためなら、どんな手段も使う。そして、この歯車がその鍵になるかもしれない」
ラーンとイシェは互いの顔を見合わせた。彼らの前に広がるのは、遺跡の謎と、テルヘルの野望。そして、彼らの運命を変える一つの「援用」の可能性だった。