「おい、イシェ!あの石の塊、どう思う?」
ラーンの太い指が、埃まみれの石像を指さす。イシェは眉間に皺を寄せ、慎重に近づいていく。
「何だろうね…見慣れない造形だ。でも、遺跡でよくあるような装飾品でもないし…」
イシェの視線が石像の表面をなぞるように動く。刻まれた模様は複雑で、まるで忘れられた言語のようだった。
「どうせ、またラーンの勘違いだろ?」
テルヘルが冷めた声で言った。彼女は背の高い体躯を生かし、周囲を見渡しながら話していた。
「いや、今回は違うって!この石像、何か感じるんだ!」
ラーンは目を輝かせながら石像を撫でる。彼の興奮にイシェは苦笑する。
「ほら、触れてみろよ、テルヘルも!」
「無駄だ。」
テルヘルは手を交差して立ち去ろうとするが、ラーンの強い手で腕を掴まれる。
「ちょっとだけ触ってみろよ!何か感じるかもしれないし…ほら!」
テルヘルは抵抗しながらも、石像に触れる。その瞬間、彼女の表情が変わる。
「これは…」
彼女は目を丸くして石像を見つめた。その目は、今まで見たことのない光を宿していた。
「何だ?何かわかったのか?」
ラーンの声が震えるほど興奮していた。イシェも息を呑んでテルヘルを見つめる。
「この石像…これは古代ヴォルダン文明の遺物だ。そして、その内部には…」
テルヘルはゆっくりと口を開く。
「換金価値のあるものが入っている可能性が高い。」