ビレーの喧騒を背に、ラーンとイシェはテルヘルについていく。遺跡の入り口へと続く道は険しく、岩肌を削るように切り開かれていた。
「今回は大物らしいぞ」とラーンは目を輝かせ、剣を肩越しに見せびらかした。イシェは眉間に皺を寄せながら、テルヘルの後ろを歩く。「本当にあの遺跡に宝が眠っているのか?」とつぶやいた。
テルヘルは振り返らずに、「情報には間違いない」とだけ言い切った。
遺跡内部は薄暗い。ラーンが焚いた松明の火が、壁に影を落とす。イシェは足元を注意深く確認しながら、後ろから続くテルヘルの歩みに意識を集中させた。彼女は何かを感じ取っているようだった。
奥へ進むにつれ、遺跡の空気が重くなっていった。壁には奇妙な文様が刻まれ、不気味な静寂が支配していた。
「ここだ」
テルヘルが突然立ち止まり、指さした先にあったのは巨大な石扉だった。扉の上には複雑な模様が刻まれており、まるで警告のように見えた。ラーンは興奮気味に扉へ駆け寄ろうとしたが、イシェが彼を制した。
「待て、何か変だ」とイシェは言った。「この場所から何か邪悪な気配を感じるのは俺だけか?」
その時、扉の模様が光り始めた。そして、石扉がゆっくりと開いた。その奥には広大な部屋が広がっていた。宝の山、黄金の像、宝石が散乱している。まさに「大穴」だ。ラーンの目は輝き、イシェも思わず息を呑んだ。
しかし、その時、テルヘルが剣を抜いて叫んだ。「気をつけろ!罠だ!」
扉が開いた瞬間、部屋の奥から影が動き出した。それは人型ではない、何か獣のような姿をした怪物だった。その目は赤く燃え盛っており、鋭い牙を剥き出しにして襲いかかってきた。
ラーンは剣を振りかざし、怪物に立ち向かった。イシェも素早く reacting し、 daggers を構えた。しかし、怪物は強靭な肉体と鋭い爪で二人を圧倒した。
テルヘルは冷静に状況を見極め、壁際に置かれた石像の隙間に隠れた。彼女の目には、この遺跡が単なる宝の山ではなく、何か別の目的のために作られた場所であるという確信が芽生えた。そして、その目的は「掠奪」だったのだ。
彼女は立ち上がり、影から飛び出した。