「よし、今回はあの崩れた塔だな」。ラーンが地図を広げ、太い指で地点をなぞった。イシェは眉間にしわを寄せ、地図をちらりと見た。「また危険な場所か?あの塔は、以前も collapse したって話聞いたぞ」。
「大丈夫だって、テルヘルが調査したんだろ?」ラーンは自信満々に笑ったが、イシェは彼の背中に影を感じた。テルヘルの掠れ声で読み取れた情報によると、ヴォルダンとの関連を示す手がかりがあるという。危険を冒してでも手に入れたい情報だった。
「準備はいいか?」テルヘルは鋭い視線で二人を見据えた。「今回は特に慎重にならなければならない。ヴォルダンが目を付けている可能性もある」。
イシェは小さく頷いた。ラーンの無計画さは、時に彼を危険にさらす。しかし、テルヘルの冷徹な判断と行動力があれば、何とか乗り越えられるだろう。そう信じたい。ビレーを出発する三人後ろ姿が、夕暮れの光に溶け込んでいった。
崩れた塔の入り口は、まるで巨獣の口を開けたように広がっていた。ラーンは剣を抜き、一歩踏み出した。「よし、行くぞ!」彼の朗らかな声は、イシェの心をわずかに温めた。しかし、塔の奥深くには、冷たい影が待ち受けていることを、誰も知らなかった。