ラーンの腹が鳴った。朝から遺跡の奥深くまで潜り、汗だくになりながら石碑を運び出した疲れが骨身に染み渡っていた。
「今日はもう終わりにしようぜ、イシェ。俺、腹減って kills ぞ」
イシェは小さくため息をついた。「まだ日没前だし、もう少し探せば何か見つかるかもしれないんじゃないの?それに、テルヘルが約束した報酬を考えると…」
ラーンはイシェの言葉を遮った。「おいおい、そんなに金のことばかり考えるな。たまには俺たちの胃袋も満たさなきゃダメだろ?」
「そうだけど…」
イシェは振り返り、視線を遠くの入り口に向けていた。そこにラーンが見ることはできなかった、テルヘルの冷たい視線があった。
テルヘルは彼らを雇ったのは遺跡探査のためだけではない。ヴォルダンへの復讐を果たすための重要な情報が遺跡に眠っていると確信していたのだ。そのために、彼女は彼らを利用し、必要であれば欺きも辞さないつもりだった。
「よし、わかった。今日はここまでにしよう」とイシェは言った。ラーンの言葉に少しだけ心が動いたのかもしれない。
日が傾き始めた頃、3人は遺跡を後にした。ビレーの町へと続く道を歩きながら、ラーンは大きな石を拾い上げた。
「これ、イシェ、持っていくか?」
「何に使うつもり?」
「いい感じの形だな。武器にするんだ!」とラーンは石を手に握りしめ、力強く言った。イシェはため息をつきながら、歩き続けた。
テルヘルは3人の後ろを少し離れた位置で歩いていた。彼女の顔には、わずかな笑みが浮かんでいた。
「いい感じの駒だ」と彼女は呟いた。そして、その言葉とともに、遠くの野原に広がる夕陽を眺めた。そこには、彼女が抱く復讐への強い意志が映し出されているかのようだった。
夜になると、ビレーの町は賑わいを見せる。ラーンとイシェは宿屋で食事をとり、酒を酌み交わした。ラーンの豪快な笑い声と、イシェの控えめな笑顔が、小さな部屋に響き渡っていた。
しかし、テルヘルは部屋に戻り、一人で静かに過ごすことにした。彼女はベッドの上で、ヴォルダンとの過去の出来事を思い出しながら、眠りにつくことのない目を閉じていた。その瞳には、復讐への執念だけが燃えていた。